小町と佐助の法律相談 相談ファイル・・・その3
Q:離婚を前提に、夫と別居を始めたのですが、生活費を夫に請求することはできますか?
A:夫婦の婚姻関係が続いていれば、婚姻費用の分担を請求できます。
小町さんの相談
離婚に向けて、この秋、子供2人を連れて家を出て、夫と別居を始めました。現在、夫から生活費はもらっていません。私は以前から続けているパートのシフトを増やしているのですが、このままでは子供たちを満足に育てていくのはとても難しそうです。私から始めた別居ですが、夫に生活費を請求することはできますか?
小町:はい。身勝手な夫と顔を合わせずに済んで安心しています。ただ、実際に生活を始めたら、金銭面が厳しくて、悩みはつきないです・・・。
- 弁:ご主人と生活費のことは話しましたか?
小:いいえ。お金の話をすると、逆上されたり、別居の話がこじれそうだったので、何も話し合わずに家を出てしまいました。今になって生活費のことを言い出だしてもいいんですか?
- 弁:はい、大丈夫ですよ。
夫婦が結婚している間、その家庭が普通の社会的な生活を保つために必要な生活費のことを、婚姻費用といいますが、民法760条では、婚姻関係が続いている間は、夫婦が互いに婚姻費用を分担することになっています。なので、小町さんもご主人に婚姻費用を分担してもらうことができます。・・・・・・(*1)
- *1 民法760条(婚姻費用の分担)「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」
小:それって、夫にどう切り出せばいいのですか?
- 弁:ご主人には切り出しにくいとは思いますが、婚姻費用の金額や支払い方法を決めるのは夫婦での話し合いになります。
小:そ、そうなんですか・・・自分のことだものね、自分で言わなきゃダメよね・・・。
- 弁:もし、ご主人が話し合いに応じないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停でも原則的に金額はお互いの合意によって決めますが、調停で決まらなかったら、審判に移行します。
小:もしものときは、そういう方法もあるんですね。夫に請求する金額は、こちらで必要な金額を自由に決めていいんですか?
- 弁:ご主人がその金額に合意すれば、問題ありません。ただ、ご主人の生活もありますから、金額を伝えるときは、きちんと説明がつく金額にしたほうがいいかもしれませんね。
小:確かに。普通はどのくらい希望していいんですか?
- 弁:家庭裁判所では、合意が難しい場合などのために、婚姻費用の分担額を算定しています。
小:私の場合だと、どうなりますか?
- 弁:小町さんの場合ですと、ご主人の年収が650万円。小町さんの年収はいくらですか?
小:85万円くらいですけど。私の収入も関係あるんですか?
- 弁:はい、そうです。
小町さんの場合、ご主人を、基礎収入が多く婚姻費用を支払う義務がある義務者といい、小町さんを基礎収入が少なく婚姻費用の支払いを受ける権利がある権利者といいます。
婚姻費用の金額を決めるときは、夫婦の基礎収入の合計を世帯収入とし、その金額を義務者と権利者それぞれにかかる最低生活費で分け、義務者であるご主人が権利者の小町さんに支払う金額を出します。
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金額決定にはお子さんの年齢も関係がありますが、おいくつですか?
小:15歳と12歳です。
- 弁:当事務所にある判例タイムズという冊子に算定表があるので、金額をすぐに見ることができるんですが、そうすると、ご主人が小町さん達に支払う婚姻費用は、月額10~12万円が相当ということになります。
小:月10~12万円ですか。今の私のパート収入のままだと厳しそうだわ・・・。
おまけ
婚姻費用というのは、結婚をしている間は発生しています。ですから婚姻費用の支払義務は、婚姻中、基本的には別居していたとしても離婚が成立するまで発生しますので、請求することができると考えることができます。